2015年10月29日木曜日

4×6 = 6×4

 前項の「答案と採点」は反響を呼んでいるらしく(昨日チェックしたから、私のFlipboardに似たような話が表示される確率が高くなっただけ?)、他にも同類の記事が出て来たので続きを。

 実は、前項の問題の他に、4×6を何行何列で表すかを図示するという問題があって、くだんの生徒(小3)は、1行4個を6行書いて、減点になっていた。「正解」は、1行6個を4行だという。こちらは私としても肩を持ちにくい。あらかじめ、行列の定義(この脈絡でなら、横並びが行で、それが何行あるかと見る)を明瞭にしておく必要があり*、それはいくらなんでも小学校3年生に求めるものじゃないと思う(横書き文化では縦でひとまとまりという考え方はないということかもしれないが)。教師のほうも、何かの指示やマニュアルに従っているだけで、本気で新方式の考え方が大事だと思ってはいなかったりすると、ちょっと怖い。

 この問題で求められるのは、英語式では6個のまとまりが4個という認識なのだから、何行何列かではなく、縦に6個をひとまとまりにしていることが明らかなら、それを4「列」並べていてもOKと考えるべきだと思う。件の生徒の図解は単位となるまとまりが不明瞭なので、そこを問うて減点というのはありだろう(子どもにそんな細かいことを求めることが数学嫌いを生むというのは考えられなくはないけど、旧式の「気にしない」方式で数学好きが順調に増えていたかというと、それもまた疑問だと思う……こうした問題に正解を出した子も、結局、ただ何となく合っているだけだったりすると、これまた辛いし)。

 いずれにせよ、この評価とその背景にある新しい数学教育には「非難ごうごう」というのが実際のもよう。新しく見た記事には、「5+5+5が文句なく認められることは小学校を出ていれば誰でも知っている」という、もっともな? いや、むちゃくちゃな「論拠」まであった(http://www.westernjournalism.com/parents-see-what-got-marked-wrong-on-math-quiz-unleash-fury-on-common-core/)。アメリカも昔から全体としての数学力が心配されている国だったと思うが……

 とはいえ、ちゃんとしたことを教えても(ちゃんとしたことをちゃんと教えてほしい)、ちゃんと受け止めてもらえなければ理解の水準が上がらないのは確か。「とかくに人の世は住みにくい」。でも、「住みにくいと悟った時、詩が生れて、画が出来る」。数学も「住みにくき世から、住みにくき煩いを引き抜いて、ありがたい世界をまのあたりに写す」詩、画なんだけどな。ありがたい世界に見えない、あるいは数学が住みにくき世の住みにくき煩いになっているのがつらいところ。


* 原語では行列(matrix)ではなく、配列(array)となっていたので、そこらへんは微妙。

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