2014年1月9日木曜日

冬の月がきれいなわけ

 何かのテレビ番組で、蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」という句につけた絵が三日月の形になっているのを見たのをきっかけに、授業で学生に、この句の月の形を描けというクイズを出して、したり顏に解説したりしているのだけれど、Why the Moon Looks Different in Winterという記事が目に入って、今さらのように目を見開かされてしまった。つい何日か前には、授業の最終回のしめくくりに、『ハムレット』の「この天と地のあいだにはな、おまえの哲学では思いもよらぬことがあるのだよ」という台詞を引用したところなのに、やっぱり偉そうなことを言っていると、自分に跳ね返ってきてしまう。

 要するに、満月は太陽と正反対の側にあるので、冬の満月付近の明るい月は、夏の太陽の高度が高くなるのと同じ理由で高度が高くなるということ。もちろん日本では、そこに空気の乾燥や塵の少なさなど、追加の因子があって、いわゆる「冴えた月」になるのだろうけれど、このことに気づかされる前は、空気の状態ばかり考えていて、見上げる月というところには気づいてなかった──「観察、仮説、実験、考察」は、Eテレの「考えるカラス」という番組が掲げる科学的思考のスタイルだが、出発点の「観察」がかなりの難関かもしれない。


 でも、そう言えば清少納言は「しはすの月夜」は「すさまじきもの」にしていたなと思い出したのだが、念のためと『枕草子』を見てみると、これがない! これまたとんだ思い違いをしていたのかと思って少しググってみると、このくだりがある写本があり、『源氏物語』が「すさまじき例に言い置きけむ人」として、このことを批判的に書いているということらしい。これまた、自分で知っていると思っていたことよりずっとおもしろい話を、今さらやっと知った次第……あまりしたり顔はしないように気をつけないとという、遅ればせながら年頭所感。

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